SDGs COLUMN北海道教育大学SDGs

函館校五十嵐キャンパス長に「函館校×SDGs」をテーマにお話を伺いました!

  • 4.質の高い教育をみんなに
五十嵐キャンパス長にお話を伺いました!

「函館校×SDGs」

―函館校とSDGsの関係性についてお聞かせください。

函館校では、「国際と地域」という一見相反するようにも思えるこの両面を学んでいくことが非常に大切だと考えています。最近、とある国から日本に避難してきた家族がいて、函館に来ることになりました。難民を支援するプログラムを元々持っていたこともあり、そのご家族の生活やお子さんたちの日本語教育を函館校が中心になって行いました。国際的な視野を持ちながら、この地域に暮らす人の支援をする、まさに私たちがやりたいことの典型的な例だと思います。講師だけではなく、学生にもどんどんサポートに入ってもらいましたが、このようなフィールドワークを日々体験できるのが函館校の最大の強みです。この事例はSDGsの目標でいうと、「目標1:貧困をなくそう」、「目標3:すべての人に健康と福祉を」、「目標4:質の高い教育をみんなに」、「目標10:人や国の不平等をなくそう」、「目標11:住み続けられるまちづくりを」、「目標16:平和と構成をすべの人に」など、あらゆる部分にわたって貢献できる取り組みではないかと思います。

―フィールドワークを通して学生が積極的に地域の人達と関わることでどんなことが生まれるのでしょうか。

函館校の地域プロジェクトは毎年40以上のプログラムが稼働しています。これほどの数の地域プロジェクトを同時に行う大学は全国的にも珍しく、地域のニーズを把握しながら、全ての学生がこのどこかのプログラムに参加しています。学生と地域との関わりが非常に密接になり、学生たちの自主的な活動も増え続けています。例えばレインボープロジェクトというLGBTQの方たちへの支援は、地域プロジェクトから発展して生まれたものです。

また、課題を抱える地域に学生が一定期間滞在して就業体験を行う「地域づくり支援実習」では、厚真町に学生たちが2週間ほど泊まり込み、震災復興支援をしました。実習の後に実習報告会を行ったのですが、ある学生の発表に私は感銘を受けました。厚真町の小学生が学生に「お姉さん、僕ヘリコプターに乗ったんだよ」と話したそうです。「それはカッコいいね、よかったね。」と学生は返したのですが、よく話を聞くと、震災で救助されたときにヘリコプターに乗ったということがわかりました。学生はこの経験から「私には想像力が足りなかった。」と発表したのです。その言葉に私は深く感動しました。人を育てることとは何か、究極に大切なことは何なのかを考えると、それは「共感する心」を育むことではないかと思うのです。発表した学生は実習のこの体験から相手の本当の気持ちに思いを馳せ共感するということはどういうことか、深い学びを得たのだと思います。

地域に足を運び、地域の人と関わって心を揺り動かされるということがとても大切だと私は思います。それは座学では学べません。私たちは、「人に思いを馳せる」ことができる人材を育てたいのです。

―SDGsというのはまさに想像力ですよね。このままでは地球がどうなってしまうのか、誰がどうしなければいけないのか、想像力が根本にあるように感じます。

学生は必ずしも教員になるわけではなく、公務員や民間企業に就職する人もいます。しかし、どんな職業に就いたとしても、人のことを思いやり、想像できる人はきっとその町を変えるのではないかと思っています。

2021年には国際地域イノベーター人材養成プログラムをスタートさせました。将来この地域でイノベーションを起こすような人材養成をすることを明確に打ち出したプログラムです。地域づくりを考えるコースと、日本語学習支援ができるコースがあります。私自身、長年特別支援教育に携わってきましたので、ダイバーシティコミュニティ論の授業を行っています。例えば、発達障害の人はニューロダイバーシティ、神経的な多様性という解釈もあります。また、LGBTQのプログラムもありますし、ジェンダーを専門とする先生もいます。初めての取り組みですが、どのコースを選んでも、函館校の学生であれば、専攻に関係なく、どのカリキュラムを履修してもよいことにしています。まだまだ試行錯誤の段階ではありますが、この学びが、学生に対してだけではなく、この地域にもっと広がれば、小学生にも社会人にも生涯に渡って持続可能な教育、知の発信ができるのではないかと考えています。

私は、教育大の理念である「人が人を育てる」という言葉が本当に大好きです。地域に貢献できる人間を育てたいという思いを強く持って取り組んでいます。